リミットサイクル(Limit cycle)
自律系の周期振動
これまでのように状態空間を ここに, は連続でかつ必要な回数だけ微分可能な性質を持つと仮定しよう.言い換えると,すべての初期値に対して解の存在と一意性が満たされ,かつ解は未来と過去に延長可能であるとする. の性質を持つ解のことである.正数 今,式 (1) の解を と書くことにする.式 (2) の周期解があったとして,初期値 と書くこともできる.つまり,この式を満足する正数 を周期軌道(periodic orbit) または閉軌道(closed orbit)という.周期軌道上の任意の初期値を出発する解は,式 (4) の性質を持つ. 一般に周期解に限らず,解 (3) の軌跡を軌道(orbit) という.これを と書くことにする.未来へ延長した解からなる軌道: を正の半軌道(positive semi-orbit),過去へ延長した解からなる軌道: を負の半軌道(negative semi-orbit) ということがある.もちろん となっている.解の一意性から軌道は,平衡点以外の点では,決して交わることはない. 周期 例) リミット・サイクルを持つ 2 次元系
例として人工的方程式のように見えるが次の力学系を考えよう. を持っている.ここに, したがって,位相については を持つ.また,原点は不安定な平衡点である. 原点以外の初期値から出発する軌道は, 時間が経つとリミット・サイクル (14) に漸近することも分かる. なお,このリミット・サイクル上では, 位相が一定となり変化しないことに注意しよう. すなわち,リミット・サイクル (14) は振幅については漸近安定であるが, 位相についてはそうでない. 後にみるように, この性質は一般のリミット・サイクルについても言えることである. これを軌道安定(orbitally stable) であるという. 相平面図を図 1 に示した. 図 1: 式 (10) の相平面図.
式 (10) に関連して,方程式 も,式 (14) をリミット・サイクルとして持つ. 更に van der Pol 方程式: やレーリィーの方程式: も定性的に同じような性質を持っている.すなわち軌道安定なリミットサイクルを 1 つ持つ. ■ |