位相幾何学的性質




平衡点の位相的分類

平衡点の分類について考える.ここでは位相幾何学的な分類を考える.この分類は平衡点の分岐問題において中心的役割を果たす.

いま,img1.png を自律系式:

img2.png ...(1)

の 1 つの平衡点,この点における線形化方程式を

img3.png ...(2)

とし,ヤコビ行列を

img4.png ...(3)

とする.また,この行列 img5.png の固有値,すなわち特性根を

img6.png ...(4)

とする.このとき,平衡点 img7.png が次の条件を満たす場合,双曲的(hyperbolic) または単純(simple)であるという.

平衡点が双曲的である条件は,係数行列の全ての特性根について

img8.png ...(5)

を満たすことである.この条件は,基本解が指数関数的に増大するか,あるいは減少する関数のみで重ね合わされることを意味している.言い換えると,基本解として特性根零に対応する定数解や,純虚数に対応する振動解を持たない場合といえる.

さて,双曲型平衡点に出入りする解の作る曲面(多様体)を定義しよう.このため,まず線形化方程式(2) の解が次の 2 つの不変部分空間に分割されることに注意しよう.

いま行列 img9.pngimg10.png となる img11.png の一般化された固有空間の直和と img12.png の共通部分を,不安定不変部分空間と呼び img13.png と書くことにする.同様に img9.pngimg14.png となる img11.png の一般化された固有空間の直和と img12.png の共通部分を,安定不変部分空間と呼び img15.png と書くことにする.同次方程式の解の性質(ここにリンクを作成)から次の幾何学的結果を得る.なお,線形化方程式の解が張るベクトル空間 img12.png は平衡点 img7.png の接空間(tangent space) と呼ばれている.

  • 接空間の分解
    • 双曲型平衡点 img7.png の接空間 img12.png は,次のように不安定・安定不変部分空間に分解できる.

      img16.png ...(6)

    • ここに img17.png は集合の要素の数を表す.

次に,自律系(1) の img18.png において初期値 img19.png を通る解を

img20.png ...(7)

と書くことにしよう.そこで集合

img21.png ...(8)

を考えよう.これらの集合は,それぞれ双曲型平衡点 img7.png の不安定(unstable)および安定多様体 (stable manifold)と呼ばれている.この 2 つの集合は状態空間内にあり,時間が経過するにしたがって平衡点から遠ざかる,あるいは近づく初期値の集合である.また,点 img7.png での線形化を行えば,上で定義した不安定部分空間 img13.png と安定部分空間 img15.png が得られる.これらの部分空間は点 $img7.png の接空間を張っていることに注意しよう.実際次の性質がある.

img22.png ...(9)

さて,2 つの平衡点が位相幾何学的に同じ性質を持つとは,これらの平衡点の近傍において,時間の進展の向きに向き付けられた解軌道全体を考えたとき,同位相写像(1:1 写像で逆写像も共に連続となる写像)によって互いに写り変わることのできる場合をいう.このことから双曲型平衡点はその不安定多様体(または同じことであるが安定多様体)の次元が異なる毎に,その位相幾何学的性質が異なると言える.

そこでいま,

img23.png ...(10)

の性質を持つ平衡点を img24.png 次元不安定な双曲型平衡点と呼び,img25.png と書くことにしよう.ここでは平衡点の記号(ここはリンク要?)の左下付き添字に不安定次元を記すこととした.img24.pngimg26.png から img27.png まで img28.png 個変えることができる.したがって次の結果を得る.

  • 位相的に異なる双曲型平衡点
    • 自律系(1)の位相的に性質の異なる(すなわち位相的タイプの異なる)双曲型平衡点の総数は全部で img28.png 個である.それらは

      img29.png

    • である.img30.png は不安定次元が零次元なので,安定な双曲型平衡点または沈点(sink)という.逆に img31.png安定次元を持たない平衡点なので完全不安定な双曲型平衡点または源点(source)という.img32.png は ひとまとめにして鞍型点,峠点あるいはサドル(saddle)などと呼ばれている.

さて,双曲型平衡点の重要な性質は,この平衡点の近傍では元の非線形方程式(1)の解と線形化方程式(2)の解が位相的に同じ性質を持つことである.このことから,双曲型平衡点であると線形化近似した式(2)の解を調べることによって元の方程式の解の様子を議論できる.

次に,特性方程式の係数と双曲型平衡点のタイプとの間の関係について考えておこう.平衡点での線形化方程式を

img33.png ...(11)

とし,その特性方程式を

img34.png ...(12)

とする.このとき,平衡点のタイプは式(12)の係数の満足する関係式で与えることができる.この研究はラウス(Routh)やフルッビッツ(Hurwitz)によってなされた.安定な平衡点となる場合の条件は,大抵の制御工学の教科書に紹介されているので参照してほしい.



固定点の位相的分類

固定点に関して位相幾何学的な分類を考える.これは周期運動の安定性や分岐問題において重要な役割を果たす.

いま, img1.png を離散時間力学系:

img35.png ...(13)

の 1 つの固定点とし,この点におけるヤコビ行列を

img36.png ...(14)

とする.また,この行列 img5.png の特性方程式を

img37.png ...(15)

とし,特性根を

img38.png ...(16)

とする.以下,特性根には零根はないものとしておく.零根があれば,写像 img9.png が退化してしまうからである.

固定点 img7.png は次の条件を満たすとき,双曲的(hyperbolic)または単純(simple) であるという.

  • 固定点が双曲的である条件
    • 係数行列 img9.png のすべての特性根について

      img39.png ...(17)

この条件は,基本解が時刻の進展に従って増大するか,あるいは減少する関数の重ね合わせによって構成されていることを意味している.

さて,双曲型固定点に出入りする解の作る曲面(多様体)を定義しよう.このため,双曲型固定点において img40.png となる img11.png の一般化された固有空間の直和と img12.png の共通部分を, 不安定部分空間と呼び img13.png と書くことにする.同様に img41.png となる img11.png の一般化された固有空間の直和と img12.png の共通部分を,安定部分空間と呼び img15.png と書くことにする. また,離散時間自律系(13)の img42.png において初期値 img19.png を通る解を

img43.png ...(18)

と書くことにしよう.ここに,img44.png である.そこで集合

img45.png ...(19)

を考えよう.これらは,それぞれ双曲型固定点 img7.png の不安定および安定多様体と呼ばれている.この 2 つの集合は状態空間内にあり,時間が経過するにしたがって固定点から遠ざかる,あるいは近づく初期値の集合である.また,点 img7.png での線形化を行えば,上で定義した不安定部分空間 img13.png安定部分空間 img15.png が得られる. これらの部分空間は点 img7.png接空間を張っていることに注意しよう. 図 1 参照.

img46.png

図 1: 双曲型固定点近傍の幾何学的構造.

実際次の性質がある.

  • 双曲型固定点の安定・不安定多様体の性質

    img47.png ...(20)

    • ここに img17.png は集合の要素の数を表す.

したがって,双曲型固定点となる場合は,線形近似 img9.png により,固定点の近傍の性質を調べることができる.これをハートマン(Hartman)とグローブマン(Grobman)の定理という.

さて,2 つの双曲型固定点が位相幾何学的に同じ性質を持つための条件を考えよう. これには次の 3 つの性質を合わせて考えなければならない.

  1. まず,写像 img9.png が向きを保つかあるいは反転するかということ.すなわち

    img48.png

    の符号がどうなるかということ.
  2. 次に,不安定と安定部分空間に制限した場合の写像 img9.png の向きがそれぞれどうなるかということ.すなわち,

    img49.png ...(21)

    とおいたとき,

    img50.png

    の符号がどうなるかということ.
  3. そして最後に, 不安定および安定部分空間の次元がどうなるかということ.すなわち,

    img51.png

    の値がどうなるかということ.

上の条件のうち,不安定部分空間と安定部分空間に関係した(b)と(c)の性質は,式(20)から各部分空間の直和が全体の状態空間の接空間となっているので,不安定あるいは安定部分空間のどちらかを考えると他方は自動的に決まってしまう.したがって以下,不安定部分空間をとりあげて条件を考えることにしよう.

そこでまず,部分空間の向きが保たれるか否かで名前をつけておこう.

  • img52.png
    1. img53.png のとき img54.png 型不安定部分空間(Directly unstable subspace)を持つという.
    2. img55.png のとき img56.png 型不安定部分空間(Inversely unstable subspace)を持つという.
    3. img57.png のとき img54.png 型安定部分空間(Directly stable subspace)を持つという.
    4. img55.png のとき img56.png 型安定部分空間(Inversely stable subspace)を持つという.

まずはじめに,写像が向きを保つ場合考える.双曲型固定点はその不安定多様体(または同じことであるが安定多様体)の次元が異なる毎に,その位相幾何学的性質が異なる.いま,

img58.png ...(22)

としよう.向きを保つことから

img59.png ...(23)

となっている.したがって,img53.png となる固定点を img24.png 次元不安定な img54.png 型固定点, img55.png となる固定点を img24.png 次元不安定な img56.png 型固定点と呼ぶことにして,それぞれ img60.png および img61.png と記すことにしよう. ここでは固定点の記号の左下付き添字に不安定次元 を記すこととした.式(23)の性質から,img62.pngimg63.png 場合には img54.png 型固定点しか存在しない.その他の場合には img54.png 型と img56.png 型が考えられる. したがって位相的に性質の異なる固定点は,全部で次の img64.png 個となる.

img65.png ...(24)

ここで,特性方程式(15)の係数と固定点の型の間の関係をみておく.

  • 固定点の分類は,
    • 特性根が複素平面上で単位円の外に何個あるか,
    • またそのうち img66.png の実軸上に何個あるか(奇数個か偶数個か)

によってなされたと考えてよい. そこで各型に対応して,特性方程式の係数が満たす条件を調べればよい.これは,線形離散システムの安定性を調べる際に用いられるラウスの表(Routh array)やシュアー・コーン(Schur-Cohn) の基準から得られる. ただ次元が高い場合は,条件が煩雑になり使いずらい. 直接数値的に固定点の型を求めるほうが楽である. ここでは 2, 3 の簡単な性質をみるにとどめる.

  1. 写像 img9.png が向きを保つことから
    img67.png ...(25)
  2. img68.png の符号については,実軸上 img66.png の特性根の個数が奇数か 偶数かをみればよい.これは img69.png の符号を調べるとよい. すなわち
    1. 状態空間の次元 img27.png が偶数のとき
      1. img70.png ならば img71.png となる実根の個数は偶数個,したがって, img53.png すなわち img54.png 型である.
      2. img72.png ならば img71.png となる実根の個数は奇数個,したがって, img55.png すなわち img56.png 型である.
    2. 状態空間の次元 img27.png が奇数のとき
      1. img70.png ならば img71.png となる実根の個数は奇数個,したがって, img55.png すなわち img56.png 型である.
      2. img72.png ならば img71.png となる実根の個数は偶数個,したがって, img53.png すなわち img54.png 型である.

次に,写像 img9.png が向きを反転する場合みておこう.この場合は,写像 img9.png が向きを反転する条件

img73.png ...(26)

を考えて,これまでと同様な話を繰り返せばよい.結果は次の img64.png 個の固定点の型を得る.

img74.png ...(27)

ここに,向きを反転する(reverse) 意味で img75.png を付した.

なおここでは,向きを反転する写像の話は特別な例を除いて問題にしないのでこれ以上立ち入らないことにする.




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Last-modified: 2009-07-23 (Thu) 20:18:53 (3309d)